リフレインが聴こえない
 大神くんは、鋭い目つきで彼女たちを見まわした。

「おまえたちのその振る舞いは、蒼が知れば落胆するだろうね。朝の全校集会がはじまるぞ。さっさと立ち去るんだ。ほら! 解散!」

 彼は、ファンクラブを追い立てるように、手をパンパンと打ち鳴らす。

「あ、やばい。番犬だ!」
「蒼くんのSPがきた!」

 口々に叫びながら、女の子たちはバラバラになって逃げだした。
 やがてわたしは、ぽつんとひとり、残される。

 こんなときなのに、わたしは彼女たちの言葉に「ああ、わかる」って、うなずいちゃった。

 イケメン生徒会長の蒼くんを護衛している、迫力のある怖いSP。
 番犬は、犬よりも怖いオオカミとも読める大神くんの苗字に、かけているんだろう。
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