リフレインが聴こえない
 そう考えたわたしは、あっと、別のことにも気がついた。

 大神くん。
 こんなことになるってわかっていたから、気にかけてくれていたんだ。

 目つきも鋭いし、怖いひとだと思っていたんだけれど。
 助けにきてくれるなんて、もしかして、すっごくやさしくて、親切なひとじゃない?

 そんな思いで、わたしはつい、大神くんをまじまじと見つめてしまう。
 その視線が、うっとうしく感じたのだろうか。
 とたんに大神くんは、眼鏡の奥の目を細め、冷たく言い放つ。

「そんなに見ないでくれる? わずらわしい」

 ああ、ひどい言い方だ。
 恥ずかしさから頬が熱くなったわたしは、慌てて視線をそらした。
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