リフレインが聴こえない
 ああ、やっぱり蒼くんはステキだ。
 ショコラブラウン色の瞳に、吸い込まれちゃいそう。

 近くで見る蒼くんの笑顔が、とってもまぶしい。
 慌ててわたしはうつむきながら、小さな声で言う。

「え……。でも、それだと、わたしが足を引っ張って、蒼くんの勉強が……」
「教えることも、それが自分の勉強になると思うから大丈夫。あ、明日の放課後からさっそく、図書室で勉強しようか。静かに学習するなら、図書室は開放しているはずだし」

 そう提案してから、蒼くんは面白そうに、声をたてて笑いながら続けた。

「それに、菜花ちゃんに、ぼくの顔に慣れてもらわきゃね。いつまでも照れていたら、その先に進めないよ」

 うつむいたまま、わたしは冷や汗タラリとした。

 ああ、まだ蒼くんのキレイな顔に慣れていないこと、バレているんですね。
 それに、その先ってなんですか?
 恋愛初心者には難しすぎて、わたしにはとても無理です……。

 よけいに恥ずかしくなったわたしは、家に着くまで、蒼くんの顔をまともに見ることができなかった。
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