極上の愛に囚われて
二
パーティは定刻通りに終了し、煌びやかなひとときを過ごした面々が続々と帰路に就く。
私たちも社長と一緒にエントランスを出た。
「おつかれさまで~す」「山下も間宮も、まっすぐ家に帰れよ」
「はぁい。分かってます」
「おやすみなさい」
社長に挨拶をして、安奈とふたりで駅に向かう。
夜風がひんやり冷たくて、思わず身をぶるっと震わせる。春とはいえドレスの上にコートを着ているだけでは、やっぱり寒い。
イベントホールが駅に近いのは幸いだ。
「沙雪はこのあとどうする? まだ九時前だし、カフェに寄って甘いもの食べてから帰ろうか?」
「ううん、止めておくわ。気疲れしちゃったから、早く帰って休みたい」
「そっか、そうだよね。話をした人、みんな超有名人ばっかりだったもんね。失礼のないようにするのが精いっぱいだったよ」
そう、アヤコさんの一件で目立ったせいもあって、こちらから声をかけなくても人が集まってきたのだった。しかも顔を見れば、誰もが名前を言える人ばかりが。
「じゃあ、おやすみ」
安奈とは路線が違うので改札前で手を振って別れる。彼女の姿が見えなくなってすぐ、私はホームに向かわずに駅舎を出た。
タクシー待ちの列に加わり、開かれたドアから運転手に「五丁目の二番地辺りまでお願いします」と告げ、シートに身を沈める。