極上の愛に囚われて


 バッグを置いてコートを脱ぎ、冷蔵庫からミネラルウオーターを出して飲む。冷たい液体が体の芯を流れていくと、彼と過ごした夢の時間が薄れていく気がする。現実に戻るというべきか、狂おしいほどの恋情をセーブする夜のルーティンだ。

 そうしないと、激情に任せてなにをしてしまうか分からないのだ。

 ドレスを脱いでハンガーにかけ、サッとメイクをお落としてそのままベッドに倒れ込んだ。

「不倫……か。世間的に翔さんと私の関係は、そう言えるのかな」

 翔さんを好きになる前は、不倫をする人の気持ちが分からなかったし、最低の行為だと思っていた。

 それなのに……。

「思いは止められないんだよね。いっそ、嫌いになれたらいいのに……」

 でもそんなのは無理。

 だって、彼に奥さんがいると知ったときだって、ショックを受けて憎くなったものの嫌いになれなかったんだもの。
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