極上の愛に囚われて
三
バッグを置いてコートを脱ぎ、冷蔵庫からミネラルウオーターを出して飲む。冷たい液体が体の芯を流れていくと、彼と過ごした夢の時間が薄れていく気がする。現実に戻るというべきか、狂おしいほどの恋情をセーブする夜のルーティンだ。
そうしないと、激情に任せてなにをしてしまうか分からないのだ。
ドレスを脱いでハンガーにかけ、サッとメイクをお落としてそのままベッドに倒れ込んだ。
「不倫……か。世間的に翔さんと私の関係は、そう言えるのかな」
翔さんを好きになる前は、不倫をする人の気持ちが分からなかったし、最低の行為だと思っていた。
それなのに……。
「思いは止められないんだよね。いっそ、嫌いになれたらいいのに……」
でもそんなのは無理。
だって、彼に奥さんがいると知ったときだって、ショックを受けて憎くなったものの嫌いになれなかったんだもの。