極上の愛に囚われて
立ち上がりそうになる自分を懸命になだめたけれど、ドキドキと脈打つ心臓はまったく落ち着かなかった。
ロビーの中央辺りでビジネスマン風の外国人と笑顔で握手をしている。周りには黒服のいかつい人や秘書らしき人がいる。とてもVIPな雰囲気だった。
俄かには信じられなかったけれど、合点もしていた。
それまでも高級なレストランの個室や料亭の個室など、セレブ級のお店ばかりだったから、なんとなくセレブだとは思っていたのだ。
でもまさか、天下の小栗ホールディングスだなんて……。
『間宮さん、どうしました? 電撃的に惚れちゃいましたか。すごいカッコイイですもんねぇ』
振り向けば、地元作家さんが訳知り顔でうんうんと頷いている。
『違います。知り合いにいていたので、びっくりしただけですよ』
心臓は高鳴ったままだったけれど、必死に平静を装って打ち合わせを再開した。
私に素性を教えてくれないのは、なんでかな……。
私を信用してくれてないのかな。
五度目のデートの時におずおずと尋ねると、彼は『参ったな』と困ったように微笑んだ。