極上の愛に囚われて
翔さんは一瞬思案顔になったあと、こういった。
『そうか……このあとも時間ある? 連れて行きたい店があるんだ』
その店が『ブルーム』だった。
『ここなら、気兼ねなく沙雪と会える』
うれしそうな彼の顔が忘れられない。
御曹司の彼が人目を気にせずに過ごせる場所。今までも個室を利用していたけれど、店への出入り時などはどうしたって人目に触れる。
でもブルームならばその心配はないのだ。それは私にとっても嬉しいことだった。
それにカウンター席を利用するブルームは体を寄せ合うように座るため、自然に彼との密な時間を形成していく。
彼が優しい瞳で私を見つめ、髪に触れたり手に触れたりするたびドキドキしてしまう。恋心が膨らんでいくのは必然だった。
けれど、翔さんは私にキスしたり、体を求めてくることは一切しない。
私のことをどう思ってるの? どうなりたいの?
恋心と一緒に膨らんでいく疑問を覚ったかのように、彼は私に伝えてきた。
『僕がこんなふうに会いたいと思うのは、沙雪だけだよ。僕を信じてほしい』
甘いささやきの言葉と反比例する真剣な眼差しは、彼の本心だと思えた。