極上の愛に囚われて
でもそれならどうしてキスをしてくれないの?
溢れる思いが止められなくて、真夜中のブルームの庭で彼の袖を引っ張ったのだ。
『どうした?』
立ち止まった私に同調して彼も歩みを止める。
見上げると彼の表情はいつもどおりに優しくて、知らずに涙が溢れてきていた。
彼が私に何もしないのは、彼が御曹司で私が庶民だからなの?
彼はただの御曹司ではない。天下の小栗ホールディングスの御曹司なのだ。王家と平民ほどの身分差がある。
聞きたいけれど口に出せない。言ったら最後、身分差を理由に二度と会うことができなくなりそうで。
恋の沼に全身浸かって抜け出せなくなっていた私には、目で訴えることしかできなかった。
涙が零れるままじっと見つめていると、切なそうに顔を歪めた彼が頬を伝う滴を指先で拭った。
頬に触れている指が顎を支え、ゆっくり近づいてきた彼の唇が重ねられた。
初めてのキス……。
うれしくて、うっとりと目を閉じるとぎゅっと抱きしめられた。触れていただけの唇が吸われて、深いキスへと変わっていく。