極上の愛に囚われて
私を味わうように舌を絡めて甘く吸う。彼の媚薬のような吐息に酔いしれて、時を忘れて唇を求めあう。幾度も重ね合わせて離れていく彼の唇に、私のリップの色が微かに移っていた。
その唇がクッと結ばれる。
『ゴメン……ずっと我慢してたんだけど、今夜は無理だった』
『謝らないで……私、すごくうれしい……ずっと、一緒にいたい。ダメ?』
思いを口にするけれど、彼は私の体をそっと離した。少し辛そうに微笑む。
『それは……今夜は止そう。でも、僕は沙雪のことを心から大切に思っているんだ。それだけは忘れないでほしい』
『……うん。いつか一緒にすごしたい』
このときはまだ障害は身分差であり、翔さんに奥さんがいるなんて、知らなかった。だから、単純にいつか彼に抱かれることを夢見ていた……。
翔さんにキスをされたのはこのときだけで、そのあとは一切手を出してこない。
それでもしばらくは彼からキスされたことを思い出してはドキドキして、人生がばら色に染まっていた。
「でも……すぐに地獄に落ちたんだよね」
あのときはあまりの衝撃に体も思考も止まって、三日ほど寝込んでしまった。