極上の愛に囚われて
人目を忍んでブルームで繰り返す逢瀬も、彼が御曹司だからではなく、既婚者ゆえのことだったのだ。
ひどいよ。翔さん……。どうしてなの?
嫌いになりたくても、彼の微笑みや優しく触れてくれる手、語りかけてくる綺麗な目を思い出すと、どうにも思いが絶ちきれない。
体調不良を理由に会社を休み、スマホの電源を切って、三日ほどベッドの中で過ごした。
涙が枯れ果てて一滴も零れなくなり、ボンヤリしながら体を起こした。
鏡を見ると泣きはらしてげっそりした酷い顔がある。
それでも明日から仕事に行かなくちゃいけない。
震える指でスマホの電源を入れると、会社からのメールに加えて、彼からのメッセージが山のように届いていた。
それもそのはずで、前夜はブルームで会う約束の日だったのだ。
体調を気遣う言葉や居場所を尋ねる言葉。言い回しが帰られたメッセージは、数秒おきから数分おきに連ねられていた。
すごく焦っている様子がイメージできて、連絡しなかったことへの罪悪感を覚えてしまい、すぐにメッセージを送った。
『ごめんなさい。体調が悪くて寝込んでたの。今は元気だよ。今度の約束の日には会えるから』