極上の愛に囚われて
 張りのある声で『乾杯!』とグラスを掲げる小栗さんの笑みはとても魅惑的で、会場にいる女性たちすべてを魅了しかねない。

「やっぱりカッコイイよねぇ」

 安奈がほぅっとため息を吐く。

「うん。たしかに、素敵だよね……」

 彼女だけでなく、近くにいる見知らぬ女性たちもこそこそささやき合っている。みんな小栗さんにときめいているみたいだ。

「お近づきになりたいけど、絶対ライバル多いよね。ああ、ほら、もう囲まれてる」

 安奈の言う通り、乾杯が終わるとすぐに小栗さんの周りには人が集まっていた。タレントや歌手、名の知れた人ばかりに思う。

「わ、トップモデルのアヤコさんもいるね。すごい、綺麗……」
「あぁ、ダメだ、沙雪。一般人に御曹司は高嶺の花すぎるわ。近づきたいけど、やっぱり何事も分相応って大事だよね。うん」

 上手に向かおうとしていた安奈は自問自答するように言い、体の向きをくるっと変えた。

 小栗さんの周りにどんどん女性が増えていくのを見て、さくっと切り替えたみたいだ。

「安奈のそういうとこ、好き。うらやましいな。私はどうしても固執しちゃうから、ダメなんだよね」
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