極上の愛に囚われて

「ね、沙雪。こっちにお皿あるよ」

 安奈に言われてハッと現実に戻る。

 そうだよね。今は、パーティのほうを楽しまなくちゃ。

 お皿を取って料理に手を伸ばそうとすると、社長が割って入った。

「こらこら、ダメダメ。今日のパーティに来た目的は自社宣伝だよ。ひとりでも多くの著名人に声をかけてきて。食べるのはそれから!」
「え~~~。それって営業の仕事じゃないですかぁ。私食べたいんです~」

 事務職の安奈が抗議の声を上げるも、「きみたちの魅力で顔を広げてきて」といって強引に人の中に送り出された。

「社長、横暴だよ」
「私が営業するから、安奈は隣で笑ってて」

 むぅっと膨れる安奈をなだめていると、背中にドスンと、体当たりされるような衝撃を受けた。

「きゃっ」

 思わず声を漏らし、転ばないよう懸命に踏ん張って、なんとか転倒を免れた。

「ごめんなさい。よそ見してたから、うっかり。大丈夫でしたか?」

 申し訳なさそうに声をかけてくれたのはモデルのアヤコさんだった。

 あれ? 上手で小栗さんと話をしていたはずじゃ……?
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