極上の愛に囚われて

「怪我はありませんか?」

 クールな目元だけれど、輝きは優しい。心の中まで引き込まれるような魅力に、彼から目を逸らすことができず、ただ見つめかえしてしまう。

「ほら、沙雪、返事しないと」

 安奈につんっと腕をつかれて我に返り、慌てて笑顔を作った。

「あの、はい。転倒もしていませんので、平気です」
「そうですか。よかった」

 小栗さんの表情がふんわりと柔らかくなった。けれど、またすぐに眉を歪める。

「ですが、このあとの時間にあなたと過ごす人を、これ以上、心配させないようにしてください」

〝このあとの時間にあなたと過ごす人〟

 このフレーズに、鼓動が跳ねる。頬が熱くなりそうになる。動揺しているのを誰にも覚られないよう、懸命に堪えた。

「……はい。わかっています……」
「では、ゆっくり楽しんでください」

 世界中の美女を悩殺するような流し目と微笑みを残し、小栗さんは去っていった。

「すっごい。このあと沙雪と過ごす人って、私のことだよね。沙雪のことだけじゃなくて、私のことまで気遣ってくれたんだ。優しくて、惚れちゃいそう……」

 安奈の目がうっとりと潤んでいる。
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