死んだはずの遠藤くんが教室に居る話
3
疲れた……。
怖かったけど
一言で表すと
疲れた。
遠藤くんが消えた後は教室中が大騒ぎで、担任の大きな声も耳に入らず、女子の大半はカバンを持って一目散に叫びながら教室を出て行き、今井たちは懲りずに自分たちの机までも遠藤くんの席に投げ飛ばし、最終的には仲間内のケンカが始まってしまって、担任が様子をうかがっていた数人の先生たちに助けを求め、まとめて職員室に連れて行かれた。
「部活休んでいいかな」
しれっと僕の前で聞こえたのは、ひとり残った女子で北沢の声だった。
最後に教室に残ったのは
委員長の北沢と坂井と、賢い大岸くんとYouTuberの矢口と僕だった。
「いいんじゃない?うちのクラスはみんな休みで。あとから先生が説明すると思うよ」
スマホのカメラで荒れた教室の様子を撮影しながら、矢口がそう言った。
「うっちー、一緒に帰ろう。みんなで帰ろうー。俺、ひとりで帰るの嫌だよ」
「坂井くんは柔道特待生で入学したんだよね」
北沢がそこで突っ込む。
「俺怖いのダメなんだよー。恨んで地獄に落とすって言ってなかった?あいつ……いや、遠藤くん!」
聞こえていたら困ると思ったのか、坂井は慌てて遠藤くんと個人名を出した。
「あの金属音ひどかった」
僕が素直にそう言うと、みんなうなずいて苦い顔をする