死んだはずの遠藤くんが教室に居る話
「呪い殺すとか言われたんでしょう」
 手首を強く握られ、勘弁してくれよって振り払おうと思ったけど、鏡の向こうで泣きそうな顔をしているのを見つけて心が沈む。

「呪い殺すとは言われてないよ。話を盛りすぎ」
「そいつが俊太を呪い殺したら、お母さん……そいつを八つ裂きにして、引き裂いて、昨日研いだ包丁で刺し殺してやる!」
 まじ怖い。
 ってゆーか刺し殺せないし。遠藤くんもう死んでるし。
 母親から殺すってワードを聞くとは世界終わった。
 親にまで広がってるとは。

「気持ちはもらっとく。ちょっと休ませて、ご飯に起こして」
 逃げるように階段を上がると、兄の部屋の前に整理された洗濯物が置いてあった。僕はそれを横目でみながら自分の部屋に入ってベッドにダイブした。

 兄の姿を最後に見たのはいつだろう。
 
 両親が何も言ってないから、たぶん元気で部屋にいるのだろう。宅配便も届いているようだし。

 10歳上の兄が部屋に引きこもって、早くも2年が過ぎようとしていた。


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