死んだはずの遠藤くんが教室に居る話
 
 教室の扉の前には山のような野次馬の人だかりで、迫力のある3年生が「まだ来てねーのかよー」「見えねーぞ」と騒いでいた。丁度、矢口と一緒になったので、ふたり小さくなって教室に入る。

「配信見た」って言うと「さんきゅー」って返ってきた。

 遠藤くんの姿はまだないけど、机が新しくなっていた。
 昨日までの落書きした机ではなく、新しい机にチェンジしていた。誰かが変えてくれたのかな、大岸くんか北沢か……ってとこかな。

「おはよー」
 柑橘系の香りが北沢の声と一緒にやってきて、僕の前の席に座る。
「昨日内田くんラッキーだったね。私びしょ濡れだったよ。あれっ?机変えてくれたの?」
 北沢は僕の顔を見ながら遠藤くんの机を指さした。
「いや僕じゃない。北沢だと思ってた」
 僕は素直にそう言った。

「大岸くんか先生か……りっちゃんか彩菜かもしれない。よく気づくから」
「りっちゃんって須藤?」
「飯塚!いいかげん覚えなよ」
 クールな委員長だと思っていたら、表情がコロコロ変わって楽しい発見だった。

「みんな生きててよかったね」
「うん。もっと休むかと思った」
「ひとりでいるより、みんなと一緒の方が安心するからじゃない?」
「たしかに。でもみんな寝むそー」
「寝れなかった人が多いんだよ。LINEガンガン鳴ってたし」
「北沢も寝不足?」
「ううん。オフにしてたから」
「同じヤツがいた」
 ふたりで同時に笑っていたら「うっちー」と、充血した目をして坂井が大きな身体を揺らしてやって来た。
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