死んだはずの遠藤くんが教室に居る話
「あの……」
遠藤くんのお母さんとお姉さんが北沢を見上げると、北沢は深呼吸をしてから澄んだ声でふたりに言う。
「あの、私の父は3年前に亡くなりましたが、自分で……あの、自死しました」
とんでもない告白に僕たちは驚いた。
「それで、私と母と兄は毎日心が苦しくて、残された自分たちがもう少し父を理解してあげればよかったって、後悔ばかりしてました。自分を責めてばかりでした。あの時ああすればよかった。こう言えばよかった。もっと……もっと……って」
北沢は声を震わせながら一生懸命伝える。
「そしたらお坊さんが、『自死された方は心の悪性の病気なんだよ。良性の病気は何とかなる時もあるけれど、悪性の病気は周りの力ではどうにもならない。だから自分が何かできたかもと思わないで、自分を責めないでように』って言われて……関係ないかもしれないけれど、お母さんもお姉さんも自分を……その、責めないでください」
我慢できなくなったのか、北沢は泣き始めてしまい、前の席の女子が北沢を抱き寄せてふたりで泣いていた。
遠藤くんのお母さんは「ありがとう」って心を込めて北沢に言うから、北沢の涙はもっと流れることになる。
笑顔の下にそんな過去があったなんて
誰も知らなかった。
そして
次に口を開いたのは遅すぎる本人だ。
やっと口を開いたかって言ってやりたい人物だった。
「本当の話を聞いてほしい」
遠藤くんは話し始める。