死んだはずの遠藤くんが教室に居る話

５

「僕はバカな事故で死にました」

　遠藤くんは意を決したようにそう言って、教室の後ろから教壇の前に歩いて移動した。

　みんなはそれを目で追っていたけど、状況がわからない担任と遠藤君のお母さんとお姉さんは、みんなの目線をどうとらえていいのか、わからずためらっていた。
　お姉さんは「どうしたの？何かあった？」と、近くにいた坂井にすがって聞いていたので、坂井は「遠藤くんが『本当の話を聞いてほしい、僕はバカな事故で死にました』って言って、前に動きました」と返事をすると、お母さんとお姉さんは涙を止めて顔を合わせた。

「あっ、母と姉にも説明しないといけないから面倒でごめんだけど、僕の言葉を伝えてほしい」
　遠藤くんは坂井の方を見てそう言ったけど、坂井が不安そうな顔をしたので、大岸くんがスッと動いて軽く手をあげてお母さんの横に動いたので、坂井は心から助かったって顔をしていた。クールな大岸くんなら上手に伝えるだろうと僕たちは安心する。

「諸田先生には説明しなくていいから。あまり話もしたことなかったから信頼関係もないんだ」
　申し訳なさそうに続けて言うので、僕たちは小さく笑って納得していた。

「えっ？何？何？なんて言ったの？」
　お姉さんが大岸くんに詰め寄り、大岸くんはみんなの迷惑にならないくらいの声で遠藤くんのお母さんとお姉さんに遠藤くんの言葉を繋いだ。

　大岸くんの連携作業が上手くいきそうなのを確認してから、遠藤くんはまた話しを続ける。