死んだはずの遠藤くんが教室に居る話
「すっごい怖かったんだよ。復讐とか恨むとか地獄に落とすとか」
「あの金属音、本当に頭が割れるかと思ったんだから!」

 度重なる苦情に、遠藤くんは頭を下げてひたすら謝っていた。

「怖がらせて本当にごめん。本当のことをみんなに言って謝らないと、僕は成仏できない気がするんだ。きっと遠くから光がまたやってきて、成仏できると思う。ごめんなさい」

 そう言われると死んだ人相手にゴタゴタ言うのもなんだし、途中まで自分たちが悪くて反省してたのも事実だったので、僕たちは黙り込む。

「消えちゃう前に僕が言えるのは、ちょっとした弾みで調子にのって命を落とすことがあるから、油断しないでねって言いたかったのと、もう少しみんなと仲良くなりたかったな、って話と……あとは、家族に伝えたい話があって……」
 遠藤くんはお母さんとお姉さんに視線を合わせていた。

「お母さんごめんね。迷惑かけてごめんね。お姉ちゃんいつも励ましてくれてありがとう。変な死に方して本当にごめんなさい。身体に気を付けて長生きしてね。誰も悪くないから」
 遠藤くんは笑顔を見せていたけど、僕たちはなぜか本当にお別れなんだと悲しい気持ちになっていた。昨日は恐怖に怯えてさっきは真実を聞いて怒り、今は悲しい。忙しい二日間だった。

「お母さんの誕生日プレゼントを僕のベッドの下に隠してにあるから、帰ったら受け取って下さい。あとお姉ちゃんには僕の部屋にある物で、欲しいのがあったら全部あげるから」
 遠藤くんのお母さんとお姉さんは見えないながらも、手を取り合いながらうなずいていた。
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