死んだはずの遠藤くんが教室に居る話

　「悪霊退散！」
　遠藤くんをいじめていた今井たちは誰よりも青ざめた顔をして、近くにあるペンケースを遠藤くんに向かって投げつけているけど、それはスーッと遠藤くんをすり抜けるので余計パニックになっていた。

「ちょっと！どうしたの？何があったの？」
　さっきまで授業をしていた先生が声を詰まらせて、収拾できない僕たちを見て慌てていた。

　先生は見えないの？
　僕たちの頭の中に疑問符が沸いた。

「だって遠藤くんがそこにいる」
「遠藤くん死んじゃったんだよ」
　必死で説明する女子たちを見て、先生は気の毒そうにため息をついた。

「みんな。ショックだったのね。そうだよね……」
　先生は静かにそう言って遠藤くんに向かってゆっくり歩きだしたので、みんな静まり返ってそれを見ていた。