溺れる遺伝子
「ヒナ、最近元気ないぞ。」

「なんでもないから大丈夫。」

「………。うそだ。」



ツバサはヒナが一向にあわせないことで何かを悟っていた。


「新しいとうちゃんのことか?」

「…ちがうよ…」

「学校か?」


ヒナは俯いて首をゆっくり横へふった。


「うそだ。」


ツバサはそう言ってヒナの顔を覗き込んだ。

するとヒナは黙って涙を流していた。


「よしよし」


ツバサはそれ以上は何も聞かなかった。
お互い無言のまま歩いた。


「…なんで何も聞かないの?」


しばらくしてヒナが顔をあげた。


「俺にはわかるから」


それを聞いてヒナはとうとう泣き出した。


「ツバサぁ、家に帰りたくないよ!学校も行きたくないよ!私には居場所がないよ!
どうしたらいいの!?」


「………ヒナ、よくきいて。いつかヒナは『つきあうってなんだろう?』って俺に聞いたよね。
…その答えは…辛いときでも悲しいとき一緒にいて支え合うことなんだと思う。」



「………ツバサ…」

「なに?」


「……くさすぎ。」

「やれやれ、やっと笑ったね。」

「うそだよ。くさくない。ありがとう。頑張ってみるから」


ヒナは笑った。
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