溺れる遺伝子
「…おーいヒナ、また暗いぞ」

ツバサはヒナの頭をそっとなでた。日曜日の朝。

天気と同様にヒナの表情もどんより曇っていた。


「ツバサ…あたしやっぱ…」

「頑張れないの?」


ツバサがヒナの言葉を遮った。


「だって……」

「ヒナのためだから言うよ。人生は今よりずっとキツイことがいっぱいあるんだ。だから…」

「だから?」


「今のうちに慣れていったほうがいい、ってこと。」

「……」


まるめこまれてしまった。

ヒナは内心「ツバサは何も知らないじゃん」と思っていたが、年上のツバサの言葉は妙に説得力があり、

更に「今のうちに慣れていったほうがいい」の部分はツバサ独特の不思議なオーラが強く込められていて、


言い返せなかった。
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