溺れる遺伝子
「今年の優勝は……白組です!!!!」

年の瀬の夜。

結局何もしないまま、今年が終わろうとしている。
居間でただぼーっとしながらせんべいをかじっている自分は、
はたして本当に青春時代を生きる若者とやらなのか、と思ってしまう。


「お姉ちゃん、1枚ちょーだいーー」

ヒナからせんべいを一枚ねだるすず。


「いいけど……あれ?除夜の鐘は?」

「…やっぱ行かない。」

「なんで?」

「……なんとなく」

「ふーん」



…ヒナだって本当は気づいていた。

すずが閉じこもるヒナを外に出してあげようと必死だったこと。

だけど、その優しさを、なんとなく受け取れなかった。

自分は優しさをうけとれるような人間じゃない、とどこかで思ってしまう自分がいた。

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