溺れる遺伝子
「ばかだな。俺がそんなことするわけないだろ!!」

とつぜん外れた目隠し。

あらためてみる自分の体は心なしか青ざめていて、全身に鳥肌が立っていた。

……たすかった……。

縄をほどかれても立ち上がれないヒナ。

生きていることがこんなにもすばらしい事だと思ったことはなかった。


おもむろに携帯をいじりだすツバサ。


「もういいよ。今日は帰りな。」

背中を向けながら冷たくつぶやくと、今度は優しくヒナを抱きしめた。


「…怖かったか?笑」

ツバサは笑顔だった。
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