溺れる遺伝子
「一年の稲森っておまえかぁ」


振り向くと上級生が竹刀を持って立っている。

上級生はヒナの顎をつまみあげるといきなり拳で顔を横殴りした。


「ヤンキーならヤンキーなりにかかってこいや、いちねんせーよぉ!」

ドスッ、ガタンッ、バシッ!

「………」

「反省したか!いちねんせー!」

「校則はちゃんとまもろーねー」

「……あ…」

ヒナは破れて震えてる口をやっと開いて言った。


「たすけ…私…」

「なんだぁ?口答えか?」

ボスが笑いながら言い、取り巻きの上級生は一斉にヒナを見た。


「…彼氏に…無理矢理…染められて…ピアスも…スカートも…」

「ふぅー…ん」

「ゆ、許してください…」


「………この糞ナマ」

「やめとけ、まだ。」

ボスの一言に上級生は退散した。

幸か不幸かヒナが殴られた場所は服で隠れる範囲が殆どだった。

まだ手を抜いてくれていたのか、そこまで重傷でもなさそうだ。


「証拠を残さないやり方」として見れば一番タチの悪いやり方なのだが…。
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