溺れる遺伝子
「ヒナちゃん、起きて。」

…眠っていたらしい。スーツが顔を覗き込んでいた。
近くで見ると余計に気持ち悪い。

しかしそんなこと、どうでもよかった。
家に帰るのが億劫でたまらなかった。


「おっちゃん、あたし、今日家に帰りたくないや。」

気づけばそんなことを自分から言っていた。


「…いいんだね?」

スーツの目が血走っていた。
興奮している。


ツバサと同じ、あの性欲に満ちた目…。

男は共通の病におかされているもんなんだな。
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