溺れる遺伝子
「三か月までだったらね、麻酔をしてあまり痛みもなく手術できたのよ。」

最後の言葉が痛かった。


ずっと不安に思いつつも、検査や病院に踏み切れなかったあの時期…。


…もしも、三か月までだったらどれほどラクだったか…。

痛みもなく、費用も半分以下で済んだ。

中期人工妊娠中絶になってしまったがために、短期間で援助交際で稼いでしまったお金では足りず、スズのお年玉を借りることとなってしまったのだ。


…チクー…ン…

下腹部に痛みを感じた。

…陣痛だ…


目をつぶると、母の顔が見えた。スズの顔が見えた。
ツバサの顔が見えた。

そして…知らない子供の笑顔が見えた。
< 190 / 250 >

この作品をシェア

pagetop