溺れる遺伝子
5か月の赤ちゃんは

早産とあまりかわらない姿。

産声をあげることはなかったけれど

人間の形をしていたらしい。

あともう少しおなかにおいていてあげたら

元気にうまれてこれたのに。




…看護婦さんの話。



それを聞きながらヒナはどうしても

幸せだったころの自分たちと子供の三人の家族を思い浮かべてしまった。


痛みきった髪の毛。

あざの絶えない体。

しんでしまった私の子。


私は…どこで人生の階段を踏み外したんだろう…

少し天井をみつめてみると

「さいしょからだよ」

という声がどことなく聞こえてきた。
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