溺れる遺伝子
「これから一ヶ月ぐらい、性交は控えてくださいね」

退院する際、看護婦さんは念を押した。
感染症を起こせば、命にかかわるかもしれない、と。

…だからヒナは、ツバサに会わないように慎重に過ごしていた。


もっともあの日からツバサは何の連絡もよこしてこない。
学校の門で待っていることもなくなった。

もしかしたら、これっきりになるかもしれないな…
と思った。


正直ホッとした。
このままツバサといれば、もっと恐ろしいことになりそうだ。
ツバサを下手に刺激するぐらいなら、向こうから離れてくれるほうがいい。

むしろ、それが一番いい。

ただ、天にのぼっていってしまった子供には本当に申し訳なくて、
毎晩冥福を祈っていた。
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