溺れる遺伝子
そして間髪あけず、次のビデオがはじまった。

「先生、もうやめて!!」
誰かが言いかけたが、先生ではなく、隣にいた生徒がその声を阻止した。

ただのグロ動画ではない。
これが現実。


二本目は、人工妊娠中絶その後の赤ちゃんの遺体の画像、映像だった。


7週目の遺体から始まって
8週目…9週目…。


最初の頃は、手足が折れ、離れているもの。
そのうちに、腸がはみでているものまででてきた。
肋骨から下が折れているもの。
骨盤まで全部あらわになっているもの。

そして、それはやがて産声をあげたであろう赤ちゃんの姿だった。

13週…18週…

ヒナは19週で手術をうけた。五か月も終わりのころ…。


「19週」

そこにいたのは、本当に、赤ちゃんだった。
何も折れていない。人間そのままの姿。
本当に、あと少しおなかのなかにいれてあげれば元気にうまれてこれたはずの姿だった。


「…ひぃ…っ」

喉の奥から声が漏れ、ヒナの涙はいよいよ止まらなくなった。
ビデオが終わり、教室が明るくなっても涙がとまらない。

そんなヒナの背をそっと隣にいた子が撫でた。
指先が震えていたが、あったかかった。
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