溺れる遺伝子
バイトの帰り、電車を降りると公園がある。
公園には小さな池があって、メダカや金魚がたくさん泳いでいる。


優雅におよぐ小さな魚を眺めていると、いつものように池に手を入れる。

水面を泳ぐ魚が手の中に入る。

そしてその状態でヒナは手を中に浮かせた。


徐々に減る水のなか、数匹のメダカは暴れだす。

ぬるぬると踊る手の中の魚。時々跳ねて自分から死を図る。


水がなくなると、ヒナはそれを地面にたたきつけた。
メダカの半数くらいはここで気絶する。

そしてまだ動くそれを石で潰し、
更にその上から踏みにじった。

ぬめる粘土のように盛り上がった足元。
そこから少しはみだしたメダカのてらてら光る尾…

それらを見て、にやりと笑う。


…いつのまにか、これがヒナの日課になっていた。


なぜ自分がそんなことをしているのかはわからなかった。

罪悪感はあまりない。「なんとなく」やっているのだ。
そしてなんだかものすごくゾクゾクして…

…爽快感。


自分に怯える誰かを殴るような感覚とよく似ている。
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