溺れる遺伝子
「ヒナ!!!!!!!」

母親のどなり声で目が覚めた。
何かと思って母親のもとに行くと、置手紙があった。


「ヒナが売春していると知りました。これ以上そんな危険な子と一緒に過ごすことはできません。スズと龍吾は連れて行きます。さようなら。」


…義父の乱雑な文字だった。


母親は手紙を机にもう一度叩きつけると、その手でヒナの頬を張った。


しかしヒナは殴られるのは慣れている。
あくまで目がすわったままだった。

「アンタ、でていきなさいよ!!!!私の人生めちゃめちゃにして!!!!!!」

「……」

「なんとか言いなさいよ!!!!!!」

「…まだわかんないんだ。」

「なによ!!!不気味な!!!!」


「…なんでもない。」


この母親に何を言っても無駄なことだとはヒナが身をもって知っていた。

なんでも自分の良いように正当化し、そこから生まれた矛盾さえも人のせいにする。

要するに、現実を歪める天才なのである。
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