溺れる遺伝子
「ヒナちゃん!!メダカが卵産んでるよ!!」

「本当だ!かわいいね!!」

「早くメダカの赤ちゃんがみたいなぁ…」

「じゃあ、観察しようか、今日、何日だっけ?」

「4月の…3日!!」


春になった。
ヒナは相談所のなかで、高校二年になった。

保護相談所にいる期間もあと少し。
少し寂しいような気がしたが、この狭い世界の生活からはやく抜け出したかった。


「フツウの高校生」になりたかった。

ところが…。



「稲森さん、ちょっと…」

「はい…?」

職員の曇った顔。いやな予感がした。


「あのね…この夏にお母さんがお迎えに来る筈だったみたいだけど…」

「…けど…?」



「お母さん、…見つからないのよ。」

「え…」
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