溺れる遺伝子
ツバサがようやく寝静まったのは明け方だった。

ヒナは部屋のかたすみでうずくまっていたが、
きらりと光る何かをみつけ、

目を凝らして見ると、それがカッターナイフだとわかった。


チキチキチキチキチキ……
……チキチキチキチキチキ

何度も刃を出し入れしているうちに、いつの間にか冷静になり、今後のことを考えた。


どうやったって逃げ切れるわけがない。
それよりも、ここにいることは、もう…つらい。

謝って、戻ろうかな…
…でも。




どこに行っても、暗い未来。
私は、生きている価値が、あるのだろうか。



ヒナはカッターナイフで、そっと手首をなぞった。

血が滲んできた。



そしてそのカッターナイフを強く持つと

一歩一歩、前に進みだした。
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