溺れる遺伝子
少年院の生活は、思ったよりも厳かったものの
そして思ったよりもつらくはなかった。

面会すら許されないこの環境は
ツバサに追いかけられる心配もなければ
何かにおびえることもない。

それに、自分と似たような友達ができた。

驚いたことに、ここにいる半数の子が、父親か母親がいない。そして、たいてい親が元凶でここに来ているのだった。


「あたしに親?いねーよ。別にいるからいいってもんじゃないだろ」

「そっか…すごいね」

なかでもタカコというさばさばした子とは気が合い、一日の中でもわずかに許された自由時間ではよく話したりしていた。

そして、驚くことに、タカコはツバサを知っていたのだった。
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