溺れる遺伝子
自分で書いた架空の親からの手紙の
架空の返事を書いているだけなのに、

涙がとまらなくなるとは、不思議だった。


でも、とまらなかった。



自分が本当は、お母さんに抱きしめてもらいたかったんだと、

今になって気づいたからだった。


お母さんに抱きしめてもらう代わりに

ツバサに体とひきかえにぬくもりをもらう。


その空虚が、自分をここまで落としこめてしまったんだと

いまさらになって気づいたのだった。




タカコがトイレにいくフリをして、ヒナの席により、頭をくしゃくしゃにしていった。


タカコの横顔も、また赤かった。
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