溺れる遺伝子
お母さんは、本当はヒナが中絶したのを、知っています。だけど、言わなかった。言い出せなかった。


実は、私もシュン(継父)との間に、子供ができていたの。
だけど、シュンに言ったら、おろせ、と言われたわ。


それもそのはずね。実は私、夜は風俗で働いていたの。
シュンがまったく働かなくて…スズちゃんや龍吾君もいるのにね…。

ヒナの知らないところで、いろいろしてたのよ。
ごめんなさい。


ヒナの本当のお父さんのことも、シュンのことも、私、信じすぎていたかしら…

…ヒナのことはうらぎったのにね。


私はだめね。母親失格。
これから先、私のことなんてお母さんと呼ばないで。


だけど、これだけは忘れないで。


ヒナは私の宝物よ。


たった一人の、娘だから…――



キミコより。
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