溺れる遺伝子
「ふー」

「ふー」


日が沈む頃、二人は砂浜で砂まみれになって寝転んでいた。


「つかれたなぁー」

「うん、でもたのしかったぁー」

「…なぁヒナ…」


ツバサはヒナの肩に手をかけた。

「…ごめんな…本当はビキニいやだったんだろ?」


「え…。」

「いやだった…んだろ?」

「ん…。そこまでいやじゃなかったよ」


またとっさに嘘をついてしまった。
ツバサが急に優しくなって、どこか不安になったのだ。


「ヒナ…すきだよ」

「あたしも。ツバサ…だいす」


………

ヒナの口はふさがった。
ツバサがヒナの顔に自分の顔を重ねたのだった。

波の音が遠くに聞こえる。

全身にツバサのにおいと温もりが優しく伝わってくる。


…あったかい…
それは幼い頃に甘えていた、母のあの温もりに似ていた。
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