溺れる遺伝子
思えば私が幼い頃から両親の仲は芳しくなかった。

祖母から聞いた話によれば私が生まれるまでの5年間の戦いの中で母も父もなにか疲れ切ってしまったらしい。


父が出ていったあとの母はボロボロだった。

夜中に急に泣く、父の名前をひたすらブツブツつぶやいてばかりの日もあった。



なかでも1番辛かったのは母が感情まかせに

「あんたさえ産もうとしなければ!!」

と私に怒鳴り付けたことだった。



「さみしい、さみしい」ただただそういう母に

私は母の背中をさするしかできなかった。
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