溺れる遺伝子
私が小学三年に上がる頃、母は愛人の男とその娘息子をわが家に迎え入れた。

母は義父に夢中で子供の世話はしなかった。

義父はそれなりに私を含め子供をかわいがってくれたが、いつしか私は母をとった義父に怒りがこみあげてくるのを感じていた。


妹や弟はわがままだった。

義父がいるうちは大人しいものの、義父がいなくなった瞬間、私を困らせてきた。


教科書を隠す。
ノートを破く。
部屋を荒らされる。
食器を割る。


「やめてよ!!」

そういうと弟達は口を揃えて

「じゃあお父さんをとるな!!」

とはむかってくる。


そしてそのあとに私の母の手編みの大切なセーターをはさみで台なしにされた時は泣いた。



しかし私はこのことを義父には言えなかった。


「しっかりした優しいお姉ちゃん」
でなければ、義父に嫌われてしまうと子供ながらにわかっていたのだった。
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