溺れる遺伝子
「それじゃあ、また明日ね。」


ヒナは家路を急いだ。

昨日ツバサから逃げるように帰ったことを今なら後悔できる位だった。

さっき触れたツバサの柔らかくて形のいい唇の感覚がまだ痺れるようにして残っている。


それは、まがいもない幸せの感覚そのものだった。


ただ、正直、雑誌には傷つけられてしまった。

あの雑誌や漫画の表紙の卑猥な絵は序章にすぎなかったのである。


綺麗な女の人が全裸でよこたわっていたり、はたまた座っていたり寝ていたり…

酷いものは、黒い鎖のようなもので縛られていたりもした。


まっすぐなお腹、すらっと伸びた手足、柔らかな胸、滑らかな肌。ほっそりした体…。

あの写真の女の人のカラダはすべてヒナが手に入れたいものだった。

綺麗だな、と…うらやましいとも思った。

だけど、どうしてそれをわざわざ縛り付けるのかはわからなかった。


しかもあの女の人達は揃って苦しそうな表情をしていた。
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