溺れる遺伝子
それを買う程好きで喜ぶツバサが少し怖くなった。


…色々考えているうちに自宅についた。
夕飯のあたたかい臭いがする。

ヒナは母と義父との再婚はあまり喜べなかったが、母の手料理が食べられるようになったことはうれしいかぎりだった。


「ヒナ、おかえりなさい」

ドアを開けると珍しく母が優しく迎えてくれた。


「たっ…ただいま」

いつも帰宅したときに挨拶を交わさなかったから少し照れてどもってしまった。


リビングのドアを開けるとクラッカーが鳴った。


「お誕生日おめでとう!ヒナ!」

家族が揃ってこう言った。


「えっ…ありが…あ、ありがとうぅ!!」


急に目の前が霞んだ。
熱い涙がパタパタとこぼれてくる。


「泣くな、ねえちゃん!」

「おねえちゃん!ごはん食べよ!おなかすいたよ!」


妹達は初めてヒナを「おねえちゃん」と呼んだ。

テーブルに並んでいる食事はヒナの好きなものばかりだ。

大きなケーキにろうそくが13本。

一気に火を吹き消したヒナに家族はあたたかい拍手を送った。
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