溺れる遺伝子
ツバサが近い。


ツバサの影がヒナを覆う。

大きくて頼りある木の木陰で休んでいるような妙な安堵感。
ずっとこのままでいたいと思った。


ツバサの指がヒナの服に触れた。

よくみるとやはりツバサは震えていた。
二人は震えながら押し黙る。



「電気…消して…」


この奇妙な沈黙を破ったのはヒナだった。

しかしツバサは黙ったままだった。


蛍光灯の明かりがヒナのすべてを明るく照らしている。

そのなかでツバサはヒナの体をいつになく凝視しているのだ。


恥ずかしい。


本当はそんなに見られたくない。

ツバサの血走る目がヒナを羞恥へと追い込んでいく…



しかしヒナはもう何も言わなくなっていた。
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