溺れる遺伝子
春のおわりをつげる生ぬるい風が吹く。


「………」

ツバサの財布をいじる手が止まった。


繁華街の裏地。空には安いホテルの建物が何本も伸びている。


「…お金ないの?」

「……」


「じゃあ今日はやめとこ…」

「待って!」


ツバサは帰ろうとするヒナの腕をとっさに掴むとあたりをきょろきょろと見回した。


あたりは夕暮れ。
人通りも少ない。


「こっち…きて!!!」

走り出すツバサ。ヒナは仕方なくついていった。
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