溺れる遺伝子
たどりついたのは廃ビルだった。

壁にはひびが入り、錆びた鉄の棒がところどころ飛び出している。

中に入ると埃と蜘蛛の巣だらけで、うすぐらくひんやりとしている。


「…ヒナ……」

ツバサはヒナを固く抱きしめると唇を重ねた。
唇を割って、ツバサの舌がヒナの歯茎を這う。


…苦しそうなツバサ…


男という生き物は、性欲にふりまわされて生きているのかと思うと、なんだか哀れに思えてきた。



クラスの中では恐れられている私。


しかし、ツバサの…いや、ツバサの性欲のまえだと私はただの玩具みたいなものだ。
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