溺れる遺伝子
「稲森ヒナにはオトコがいる」


ある日そんな噂が学校じゅうを飛び交った。


「いやぁんダーリン!」

「あいしてるわぁ~」


そういってからかってくる男子。

ヒナにはその男子らがひどく子供に見えて苦笑し、すずしい顔をしていた。


黙っていないのは男子だけではなかった。

むしろタチが悪いのは女子生徒なのほうだった。

噂が流れた途端、揃ってヒナから離れていったのである。


無視から始まり、置き手紙、ひそひそ笑い、根も葉も無い噂を流してくる。
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