溺れる遺伝子
ホテルを出るともうすっかり暗かった。

身震いするヒナの手を自分のポケットに入れるツバサ。
二人はしばらく黙って歩いていた。


「あのね、ツバサ…私、お母さんになりたいんだ。」

「ふぅん」

「小さい頃からの夢でね…やさしいお母さんになりたくて…
だから、うちの母親みたいなのにはならない。」

「そっか。」


「……。」




「…で、なんで今そんなこと言うの?」



ツバサの言葉にヒナは足をとめた。

…ポケットにひっぱられてツバサの足も止まる。


「…あのね…」

「……」


暗くてよく見えないはずなのに、

なぜかツバサの顔が真っ青になっていることだけはよくわかった。
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