策略家がメロメロ甘々にしたのは強引クールなイケメン獣医師
「目の前のことに意識を集中しろ」
「はい」
“子犬のお腹の下りは、パルボを疑え”が院長と卯波先生の信条。
だから、すぐさま院長は、卯波先生を診察室に呼び入れ、パルボ抗体の検査キットで検査の指示を出している。
その際、卯波先生は院長にもマスクとオペ用手袋を渡した。
検査結果は、パルボ陽性反応が出た。ほぼパルボの診断はついていたから、確認のための検査だって。
卯波先生が、キャリーバッグごとフキを連れて、診察室から出て来た。
「卯波先生、靴底」
靴底に消毒液を噴射すると、卯波先生は「ありがとう」って。
その足で受付に向かい、坂さんに声をかけている。
「フキはパルボです。今、宝城がオーナーに説明しているから、診察が終わったら徹底的に消毒してください」
「緒花さんは?」
「保定で連れて行きます」
「血検には、私が入ります」
「坂さんに、すべてをお任せしてしまい、申し訳ございません」
「いいえ、緊急事態のときこそ、力を合わせて、最善を尽くしましょう」
「処置が終わり次第、緒花くんは、お返します」
「よろしくお願いします」
「こちらこそ、お願いします」
卯波先生と二人で、隔離室に向かった。
隔離室に入るや否や、卯波先生がフキが入るケージを整えて保温して、私は床に消毒マットを敷く。
準備が整うと、一分一秒を争う緊急事態にマスクとオペ用手袋を装着した。
小さい。フキの大きさは、にんじん一本分あるかどうかの重さで、両手にすっぽり入ってしまう。
「静脈確保して。大変だけどがんばれ」
「はい」
体は細くて小さすぎるし、骨がぽきんと折れそうで保定が難しいし、なにより血管も細すぎるから静脈確保が難しい。
あまりにも小さいフキだから、卯波先生が翼状針を準備して、フキの前肢を軽く叩いて血管を浮かせて針を刺す。
「卯波先生、凄い、一発で採血成功」
「当たり前だ。ちゃんとアル綿で押さえてあげて、チアノーゼが出ないかも見てて」
採血後、卯波先生がスピッツを持ち、坂さんに血検を託して戻って来た。
フキの口もとをめくり、チアノーゼが出ていないか確認している。
私は、レンジで補液を人肌に温めておき、卯波先生は輸液ポンプの準備に取りかかる。
脱水症状が命取りになるから、息つく間もなく電解質の点滴などを施す。
だれもが、今できるあらゆる最善の努力で、小さな命を助けようと必死に手を尽くしている。
「これから白血球が激減するから、測定不能になるかもしれない」
卯波先生が、しっかりと頭に叩き込んでおけって意味合いで、これから辿っていくパルボの経過を教えてくれる。
「パルボは腸細胞を攻撃し、体を衰弱させていく。これから嘔吐も始まる」
卯波先生は常に沈着冷静で、だからなんだ、やるだけだって涼しい顔。
「生存率は三割もある。フキ、三割に入れて助けてやるからな」
三割しかってネガティブな思考、そんなものは卯波先生の頭の中には端からない。
三割もある。
だったら、助けてあげればいいだけだって感じで、意を決して頷く目が強い。
今までの経験と知識で卯波先生は、常に先を見据える。
私にも心の準備ができたから、慌てることは少なくなると思う。
「はい」
“子犬のお腹の下りは、パルボを疑え”が院長と卯波先生の信条。
だから、すぐさま院長は、卯波先生を診察室に呼び入れ、パルボ抗体の検査キットで検査の指示を出している。
その際、卯波先生は院長にもマスクとオペ用手袋を渡した。
検査結果は、パルボ陽性反応が出た。ほぼパルボの診断はついていたから、確認のための検査だって。
卯波先生が、キャリーバッグごとフキを連れて、診察室から出て来た。
「卯波先生、靴底」
靴底に消毒液を噴射すると、卯波先生は「ありがとう」って。
その足で受付に向かい、坂さんに声をかけている。
「フキはパルボです。今、宝城がオーナーに説明しているから、診察が終わったら徹底的に消毒してください」
「緒花さんは?」
「保定で連れて行きます」
「血検には、私が入ります」
「坂さんに、すべてをお任せしてしまい、申し訳ございません」
「いいえ、緊急事態のときこそ、力を合わせて、最善を尽くしましょう」
「処置が終わり次第、緒花くんは、お返します」
「よろしくお願いします」
「こちらこそ、お願いします」
卯波先生と二人で、隔離室に向かった。
隔離室に入るや否や、卯波先生がフキが入るケージを整えて保温して、私は床に消毒マットを敷く。
準備が整うと、一分一秒を争う緊急事態にマスクとオペ用手袋を装着した。
小さい。フキの大きさは、にんじん一本分あるかどうかの重さで、両手にすっぽり入ってしまう。
「静脈確保して。大変だけどがんばれ」
「はい」
体は細くて小さすぎるし、骨がぽきんと折れそうで保定が難しいし、なにより血管も細すぎるから静脈確保が難しい。
あまりにも小さいフキだから、卯波先生が翼状針を準備して、フキの前肢を軽く叩いて血管を浮かせて針を刺す。
「卯波先生、凄い、一発で採血成功」
「当たり前だ。ちゃんとアル綿で押さえてあげて、チアノーゼが出ないかも見てて」
採血後、卯波先生がスピッツを持ち、坂さんに血検を託して戻って来た。
フキの口もとをめくり、チアノーゼが出ていないか確認している。
私は、レンジで補液を人肌に温めておき、卯波先生は輸液ポンプの準備に取りかかる。
脱水症状が命取りになるから、息つく間もなく電解質の点滴などを施す。
だれもが、今できるあらゆる最善の努力で、小さな命を助けようと必死に手を尽くしている。
「これから白血球が激減するから、測定不能になるかもしれない」
卯波先生が、しっかりと頭に叩き込んでおけって意味合いで、これから辿っていくパルボの経過を教えてくれる。
「パルボは腸細胞を攻撃し、体を衰弱させていく。これから嘔吐も始まる」
卯波先生は常に沈着冷静で、だからなんだ、やるだけだって涼しい顔。
「生存率は三割もある。フキ、三割に入れて助けてやるからな」
三割しかってネガティブな思考、そんなものは卯波先生の頭の中には端からない。
三割もある。
だったら、助けてあげればいいだけだって感じで、意を決して頷く目が強い。
今までの経験と知識で卯波先生は、常に先を見据える。
私にも心の準備ができたから、慌てることは少なくなると思う。