策略家がメロメロ甘々にしたのは強引クールなイケメン獣医師
第七章 正真正銘の貴公子
昼間の日射しは、まだ梅雨の前だというのに、夏の盛りを思わせるように暑い。
ラゴムに入職して迎えた、二年目の初夏。
ついこのあいだ、新年度が始まった気がする。
瞬く間に過ぎた一年で人生が変わった。
こんなに、いろいろな経験をするなんて、一年前に誰が想像できる?
四月から狂犬病ワクチン予防注射で、体がいくつあっても足りないほど忙しい。
そこへもってきて五月からは、そこにフィラリア投薬が始まり、毎日の勤務中は休む間もないほど多忙な日々を送ってきた。
息つくまもないほどの忙しさは、このまま六月いっぱいまでつづく。
常に、誰かに背を押されているような感覚で駆けずり回る日々。
毎日、忙しくしているほうが精神衛生上いいと思う。
運動音痴に体力がついたのかは疑問。
受付仕事をしていたら、坂さんが出勤してきた。
「おはようございます」
「おはよう、最近、元気そうね」
「何ヶ月も前に、院長から励ましていただいた言葉のおかげです。あっ、坂さんもです」
「私はついでなの?」
「違います、あの」
すっとんきょうな声で、おどけてみせる坂さんの前で、必死に首を横に振って否定する。
「冗談よ。それで院長からは、なんて励まされたの?」
「好きを貫き通せ、無理に忘れるようとするなって」
「院長、かっこいいわね、惚れそう」
お似合いだから、二人がくっつけばいいのに。
「その日から、気持ちが楽になったんです。もういいっていうくらいに、いつまでも卯波先生を想っててもいいんだって」
「よかった。一時は、どうなるかと心配だった、今だから言うけどね」
「心配をおかけして申し訳ございません」
「心配させてよ、そんなに改まらないで」
「ありがとうございます」
「久しぶりに見た。可愛い顔して太陽みたいに明るい笑顔」
「坂さんは、太陽に向かって笑ってくれる、ひまわりです。たくさんたくさん咲き誇るひまわり畑の大輪のひまわりです」
「ありがとう、嬉しい。私たちは、お互いに明るく照らし合ってるのね」
朝の光に照らされた待合室は、もう初夏のような眩しい日射しが照りつける。
「さ、今日も一日がんばりましょう。スケジュール表は、今年も予約で真っ黒でしょ」
「先の先まで真っ黒ですね、春がすぎて初夏がきたと実感します」
「スケジュール表が真っ黒になればなるほど、仕事のやりがいがあるわ」
「それだけ頼ってくれる患畜たちがいるってことですもんね」
そう、私にはたくさんの患畜たちが待っている。
待合室の掃除を始めて数分後、足音が聞こえてきた。
院長、今日はどうしたの? 足音が静かだし、大きな声で『おはよう!』って入って来ないな。
わかった、驚かそうってつもりなんだ。
もうちょっと上手にすればいいのに、ばればれ。
仕方ないな、ここはサービスで派手に驚いた振りをしてあげよう。
ラゴムに入職して迎えた、二年目の初夏。
ついこのあいだ、新年度が始まった気がする。
瞬く間に過ぎた一年で人生が変わった。
こんなに、いろいろな経験をするなんて、一年前に誰が想像できる?
四月から狂犬病ワクチン予防注射で、体がいくつあっても足りないほど忙しい。
そこへもってきて五月からは、そこにフィラリア投薬が始まり、毎日の勤務中は休む間もないほど多忙な日々を送ってきた。
息つくまもないほどの忙しさは、このまま六月いっぱいまでつづく。
常に、誰かに背を押されているような感覚で駆けずり回る日々。
毎日、忙しくしているほうが精神衛生上いいと思う。
運動音痴に体力がついたのかは疑問。
受付仕事をしていたら、坂さんが出勤してきた。
「おはようございます」
「おはよう、最近、元気そうね」
「何ヶ月も前に、院長から励ましていただいた言葉のおかげです。あっ、坂さんもです」
「私はついでなの?」
「違います、あの」
すっとんきょうな声で、おどけてみせる坂さんの前で、必死に首を横に振って否定する。
「冗談よ。それで院長からは、なんて励まされたの?」
「好きを貫き通せ、無理に忘れるようとするなって」
「院長、かっこいいわね、惚れそう」
お似合いだから、二人がくっつけばいいのに。
「その日から、気持ちが楽になったんです。もういいっていうくらいに、いつまでも卯波先生を想っててもいいんだって」
「よかった。一時は、どうなるかと心配だった、今だから言うけどね」
「心配をおかけして申し訳ございません」
「心配させてよ、そんなに改まらないで」
「ありがとうございます」
「久しぶりに見た。可愛い顔して太陽みたいに明るい笑顔」
「坂さんは、太陽に向かって笑ってくれる、ひまわりです。たくさんたくさん咲き誇るひまわり畑の大輪のひまわりです」
「ありがとう、嬉しい。私たちは、お互いに明るく照らし合ってるのね」
朝の光に照らされた待合室は、もう初夏のような眩しい日射しが照りつける。
「さ、今日も一日がんばりましょう。スケジュール表は、今年も予約で真っ黒でしょ」
「先の先まで真っ黒ですね、春がすぎて初夏がきたと実感します」
「スケジュール表が真っ黒になればなるほど、仕事のやりがいがあるわ」
「それだけ頼ってくれる患畜たちがいるってことですもんね」
そう、私にはたくさんの患畜たちが待っている。
待合室の掃除を始めて数分後、足音が聞こえてきた。
院長、今日はどうしたの? 足音が静かだし、大きな声で『おはよう!』って入って来ないな。
わかった、驚かそうってつもりなんだ。
もうちょっと上手にすればいいのに、ばればれ。
仕方ないな、ここはサービスで派手に驚いた振りをしてあげよう。