策略家がメロメロ甘々にしたのは強引クールなイケメン獣医師
淡いどころじゃない。美砂妃さんは、強烈に熱く卯波先生を好きなんだ。
「桃を、自分のトラブルに巻き込んで迷惑をかけたくはなかった。別れ話のときは、ひどい言動で傷つけてごめん」
「もし美砂妃さんに、なにかされても耐えられました。私には卯波先生と別れるほうが、もっともっとつらかった」
「美砂妃は、狂気に取り憑かれ歯止めが利かなくなり、俺と桃を引き裂くためになら、なんだってするほど異常だった」
「それでも、卯波先生といっしょにいたかった」
「俺だって桃と別れるのは、つらかった」
「じゃあ、どうして?」
「桃に生きていてほしかった。どんな形でも、桃が生きてさえいていてくれたなら幸せだ」
美砂妃さんの狂気にゾッとする。冷静沈着な卯波先生が取り乱すほどだった。
美砂妃さんは、本気で私を邪魔だと恨んでいる。そこまで追い詰められていたんだ。
「私とは、好きだけど別れたんですか?」
「好きだ、大好きだ」
切ない表情は卯波先生の顔を歪ませ、唇を噛み締めさせる。
「桃を守るために思ってもないことを口にし、悪役になるしかなかった。身を引き裂く想いで別れた」
「芝居で冷たく私を突き放したんですか? 本音を隠すために、涼しい顔で嘘を言い張って」
「そうするしかなかった」
──私を美砂妃さんから全力で守るための優しい嘘だったんだ──
「卯波先生も、つらかったんですね」
「桃のつらさに比べたら、つらいなんて思わない。桃のことが好きだから思わない」
「ずっと好きでいてくれたんですね」
「決まっているだろう。桃を忘れたことなんか一度とない。仕事を離れれば、常に頭の中は桃でいっぱいだ」
強い語尾に圧倒される。
「どれほど桃に逢いたかったか、どれだけ抱き締めたかったか」
弱々しい声で逞しい肩を震わせ、感情をあらわにする卯波先生を初めて見た。
「桃は、俺のすべての最後の人になりたいって言った」
「覚えててくださったんですか?」
「当たり前だろう。桃の一言一行でさえも、忘れられるはずがない」
「私もです。卯波先生は、『安心しろ、叶えてやる、保証する』って、おっしゃってくださいました」
嬉しさで伝えたい想いが次から次へと、言葉になって溢れ出してくる。
「他にも、たくさんの言葉をくださいました」
「だから二人の想いを叶えるために、桃のもとに戻って来た」
部屋中の景色がかすんで白く見えるくらい、卯波先生だけが目に飛び込んで、私の心を離さない。
「必ず、桃のもとに戻ると心に誓った決意があったから、離れていてもがんばれた。たとえ、二人のあいだに物理的な距離があったとしても、ここにはいつも桃がいた」
そう言って、卯波先生が人差し指で自分の左胸を軽く二度突っついた。
「ここには、いつも桃がいる」
私に向けられる卯波先生の表情は、ゆったりと包容力のある優しい笑顔だから、気にかかることを聞いてみようとする、私の背中をあと押ししてくれる。
「美砂妃さんが言っていた結婚の話は」
「美砂妃との結婚話なんか、一度だって出ていない」
卯波先生に対して、もう疑心暗鬼になることはない、安心して頷けた。
素朴な疑問が頭をよぎる。
じゃあ、再会した日に美砂妃さんが言っていた結婚話っていうのは、なに?
「桃を、自分のトラブルに巻き込んで迷惑をかけたくはなかった。別れ話のときは、ひどい言動で傷つけてごめん」
「もし美砂妃さんに、なにかされても耐えられました。私には卯波先生と別れるほうが、もっともっとつらかった」
「美砂妃は、狂気に取り憑かれ歯止めが利かなくなり、俺と桃を引き裂くためになら、なんだってするほど異常だった」
「それでも、卯波先生といっしょにいたかった」
「俺だって桃と別れるのは、つらかった」
「じゃあ、どうして?」
「桃に生きていてほしかった。どんな形でも、桃が生きてさえいていてくれたなら幸せだ」
美砂妃さんの狂気にゾッとする。冷静沈着な卯波先生が取り乱すほどだった。
美砂妃さんは、本気で私を邪魔だと恨んでいる。そこまで追い詰められていたんだ。
「私とは、好きだけど別れたんですか?」
「好きだ、大好きだ」
切ない表情は卯波先生の顔を歪ませ、唇を噛み締めさせる。
「桃を守るために思ってもないことを口にし、悪役になるしかなかった。身を引き裂く想いで別れた」
「芝居で冷たく私を突き放したんですか? 本音を隠すために、涼しい顔で嘘を言い張って」
「そうするしかなかった」
──私を美砂妃さんから全力で守るための優しい嘘だったんだ──
「卯波先生も、つらかったんですね」
「桃のつらさに比べたら、つらいなんて思わない。桃のことが好きだから思わない」
「ずっと好きでいてくれたんですね」
「決まっているだろう。桃を忘れたことなんか一度とない。仕事を離れれば、常に頭の中は桃でいっぱいだ」
強い語尾に圧倒される。
「どれほど桃に逢いたかったか、どれだけ抱き締めたかったか」
弱々しい声で逞しい肩を震わせ、感情をあらわにする卯波先生を初めて見た。
「桃は、俺のすべての最後の人になりたいって言った」
「覚えててくださったんですか?」
「当たり前だろう。桃の一言一行でさえも、忘れられるはずがない」
「私もです。卯波先生は、『安心しろ、叶えてやる、保証する』って、おっしゃってくださいました」
嬉しさで伝えたい想いが次から次へと、言葉になって溢れ出してくる。
「他にも、たくさんの言葉をくださいました」
「だから二人の想いを叶えるために、桃のもとに戻って来た」
部屋中の景色がかすんで白く見えるくらい、卯波先生だけが目に飛び込んで、私の心を離さない。
「必ず、桃のもとに戻ると心に誓った決意があったから、離れていてもがんばれた。たとえ、二人のあいだに物理的な距離があったとしても、ここにはいつも桃がいた」
そう言って、卯波先生が人差し指で自分の左胸を軽く二度突っついた。
「ここには、いつも桃がいる」
私に向けられる卯波先生の表情は、ゆったりと包容力のある優しい笑顔だから、気にかかることを聞いてみようとする、私の背中をあと押ししてくれる。
「美砂妃さんが言っていた結婚の話は」
「美砂妃との結婚話なんか、一度だって出ていない」
卯波先生に対して、もう疑心暗鬼になることはない、安心して頷けた。
素朴な疑問が頭をよぎる。
じゃあ、再会した日に美砂妃さんが言っていた結婚話っていうのは、なに?